目次
弁護士は、さまざまな面でやりがいのある、お仕事です。具体例としては、下記が挙げられます。
・高額の収入を得られる可能性が高い
・社会的信頼がある
・自由度が高く自分のやりたい仕事ができる
・社会的弱者のサポートなど意義深い仕事ができる
しかし、弁護士になるのは簡単ではなく非常に難易度が高いというイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。
特に30代・40代・50代の社会人の方などは、「社会にいったん出たけれど、自分が今から独学で弁護士になろうと思っても遅い」と考えてしまうのがふつうでしょう。
また、最終学歴が専門学校・高卒・中卒の方は、「大学を出ていないと門前払いなのではないか」という先入観をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
実は、弁護士を目指すのはいつからでも決して遅くはなく、誰でも勉強次第で弁護士になる夢を実現できるチャンスが与えられています。
この記事では、高卒や社会人の方が独学で弁護士を目指すための基本的な事項や、勉強法のヒントなどを解説します。
弁護士になるには|2つのルート
弁護士になるには、大きく分けて、法科大学院ルートと予備試験ルートの2つがあります。
まずは両者がどのようなルートなのかについて、基本的な知識を簡単に押さえておきましょう。
法科大学院ルート
法科大学院を修了した者には、司法試験の受験資格が与えられます。
法科大学院とは、大学のさらに上の「大学院」課程に相当する教育機関です。
裁判官・検察官・弁護士の法曹三者を養成することを目的としており、法学を専門とする研究者や実務家による法律の講義が行われます。
法科大学院に入学するためには、原則として「4年制大学卒業」の学歴が必要です(一部飛び級などの例外あり)。
法科大学院の在学期間は、法律試験を受けて入学した「既修者」の場合は2年、法律に関係ない一般教養試験を受けて入学した「未修者」の場合は3年となっています。
法科大学院ルートには、
・修了すれば司法試験の受験資格を確実に得られる
・研究者や実務家による先端的な講義を受けられる
といったメリットがある反面、
・学費が高い
・修了に少なくとも2年かかる
・大卒でないと受験できない
・仕事を辞める(休む)必要がある
というデメリットがあります。
お金のある大卒の社会人の方が、仕事を辞めて数年間勉強に専念して弁護士を目指すという気概があるならば、法科大学院ルートは有力な選択肢となるでしょう。
司法試験予備試験予備試験ルート
法科大学院ルートはコストやリスクが高いため、社会人の方が現実的に目指すべきなのは予備試験ルートでしょう。
司法試験の受験資格を得るためには、法科大学院を修了する以外に、司法試験予備試験に合格するという方法があります。
司法試験予備試験は、法科大学院修了者と同等以上の法律的な素養がある人に、法科大学院をスキップして司法試験の受験資格を与えることを目的としています。
司法試験予備試験の試験内容は、分量こそやや少ないものの、司法試験の内容にきわめて近く、本格的な法律試験になっています。
また、短答式試験(選択問題)→論文式試験(記述問題)→口述式試験と、3段階の試験が数か月おきに行われる点も特徴的です。
弁護士になるために年齢関係なし|中卒・高卒でも勉強次第で合格可能
弁護士になるには、予備試験ルートを活用すれば、大学を卒業していない高卒・中卒の人、年齢が高齢の方でも、試験の結果次第で弁護士になることが可能です。
前述のとおり、法科大学院ルートの場合は法科大学院の修了が必要であり、法科大学院への入学には大卒が条件になるという制約があります。
一方、司法試験予備試験には、受験資格に学歴要件は設けられていません。
そのため、高卒でも、社会人でも誰でも一生懸命勉強をして、試験で合格点を取りさえすれば、弁護士への一歩を踏み出すことができるのです。
また、司法試験・司法試験予備試験ともに、受験に年齢制限はありません。
過去には10代の合格者から60代の合格者まで存在し、非常に幅広い年代に門戸が開かれた試験であるといえるでしょう。
このように、弁護士は高卒や中卒などのバックグラウンドを持つ人でも、また、どのような年代の人でも、思い立った瞬間から目指すことができる資格なのです。
予備試験・司法試験の合格率は?
そうはいっても、司法試験は合格するのが簡単ではなく非常に難しい試験であるというイメージを抱いている方は多いかと思います。
実際の合格率を見ると、たしかに司法試験の難易度は高いことがわかります。
しかし、根気強く着実に勉強を続けていけば、決して超えられないハードルではありません。
予備試験の合格率
2019年度の司法試験予備試験の合格率は以下のとおりです。
受験者総数 11,780人
短答式試験合格者数 2,696人
論文式試験合格者数 494人
口述式試験合格者数(最終合格者数) 476人
最終合格率 4.0%
司法試験予備試験には受験資格の制限が特にないため、誰でも受験することができます。
この点を考慮しても、4.0%という非常に低い合格率からは、かなりの勉強量・努力量が必要になることがわかるでしょう。
司法試験の合格率
2019年度の司法試験の合格率は、以下のとおりです。
受験者総数 4,466人
短答式試験合格者数 3,287人
最終合格者数 1,502人
最終合格率 33.6%
33.6%という合格率は、司法試験予備試験と比べるとかなり高く感じられるかもしれません。
しかし、司法試験を受験できるのは、法科大学院を修了した人と、司法試験予備試験に合格した人だけです。
したがって、そもそも司法試験受験者全体のレベルが、司法試験予備試験よりもかなり高いということができるので、一概に司法試験が簡単な試験であると判断することはできません。
なお、司法試験予備試験合格の資格で司法試験を受験した人は、385人中315人(81.8%)が合格しています。
これは全体の平均から見てもかなり高く、またどの法科大学院の修了者よりも高い水準になっています(最高は京都大学法科大学院の62.7%)。
このデータからは、司法試験予備試験合格を突破することができれば、司法試験合格への道が大きく開けるということがわかるでしょう。
社会人が独学で司法試験合格を目指す方法は?
社会人の方が弁護士になるには、仕事と並行して密度の高い勉強を進めなければなりません。
また、大学の法学部を卒業していない方にとっては、法律という分野に慣れていないため、最初は勉強をスムーズに進めるのが非常に難しいでしょう。
このような方が司法試験合格を目指すには、以下のような勉強方法をとるのが有効です。
司法試験予備校の通信講座を活用する
法律の知識がない方が一から司法試験を目指すには、司法試験予備校の通信講座を活用するのが一番わかりやすい方法になります。
司法試験予備校では、司法試験合格のために必要となる知識をまとめた教材と講義動画が豊富に提供されています。
前提知識がない方向けの教材や講義も準備されていますので、法律初学者の方も安心です。
また、通信講座であれば、仕事を続けながら自分のペースで学習を進めることが可能です。
ただし、司法試験予備校の通信講座を受講するには、パッケージで「数十万円から百万円程度の受講料」が必要になるので、ある程度資金に余裕がある方におすすめの方法になります。
登竜門的な資格にチャレンジして法律に慣れる
法律に慣れるという観点からは、司法試験よりも要求される勉強量が少ない登竜門的な資格の勉強をすることも一つの手段です。
法律関係の登竜門的な資格としては、「宅地建物取引士」と「行政書士」の2つが代表例として挙げられます。
宅地建物取引士や行政書士の試験には、法律の基本的な知識を問う内容が豊富に含まれており、司法試験の受験にも繋がる知識を得ることができるでしょう。
ただし、最終的な目標は司法試験合格なので、これらの登竜門的な試験はスムーズにクリアして、早く本格的に司法試験の勉強に取り組み始める必要があります。
基本書や判例の原文を読み込めるとベスト
司法試験予備校の教材や講義動画などでも、司法試験に使える知識を得ることはできるのですが、効率を重視するために詳しい説明が省かれていたりするので、どうしても知識が表面的になってしまいがちです。
司法試験本番の記述問題で充実した解答をするためには、法律や判例に関する理解を十分に深めることが大切です。
勉強時間との相談にはなりますが、余裕のある方は、研究者の執筆した書籍や、最高裁判例の原文に逐一目を通しながら勉強すると、司法試験合格の確率は飛躍的に高まるでしょう。
モチベーションの維持
弁護士になることを、あきらめてしまう一番の原因は「モチベーションの低下」です。
独学で受験をして、何年も結果がでないと、だんだんモチベーションが下がってきてプレッシャーだけが増幅していきます。費用もかかります。
ですが、上記で解説した登竜門的な資格を取るなどして、一定の成果を残すと、それはあなたの「自信」となり、最終的には「モチベーションの維持」につながります。
司法試験のように、上級資格になってくると「自分自身のモチベーションのコントロール」はとても重要です。
事実、合格できない人の多くは、スタートダッシュは勢いがあるのですが、それ以上に失速が早いのです。大切なことは、目標をしっかりもってモチベーションを維持しながら、日々継続していくことなのです。
それさえできれば、年齢が高齢であっても中卒・高卒でも弁護士になれる可能性は大いにあるでしょう。
弁護士になるためのよくある質問
弁護士になるには何年かかる?
法科大学院ルートの場合
大学入学から司法試験受験資格取得までの期間は、法学既修者コースで6年(大学4年+法科大学院2年)、法学未修者コースで7年(大学4年+法科大学院3年)かかります。
予備試験ルートの場合
学習開始から最短なら2年程度の勉強で予備試験合格が可能といわれています。 ただし、合格率が4.0%の超難関試験のため、合格までに法科大学院以上の時間がかかる可能性もあることは覚えておきましょう。
そこから、司法試験に合格すれば、晴れて弁護士資格を得ます。
弁護士は高卒でもなれますか?
予備試験ルートであれば、高校や大学の卒業が必須資格ではありません。よって、たとえ中卒・高卒であっても、予備試験を突破し、司法試験に合格すれば、弁護士になることは可能です。
まとめ
司法試験合格のハードルが高いことは事実ですが、しっかりと勉強時間を確保して集中的に取り組めば、誰でも合格に手が届く可能性があります。
現在の仕事に不満を抱いている方、弁護士という職業にあこがれを抱いている方は、この記事の内容を参考にして、どんなことからでも良いので一つステップを踏み出してみてはいかがでしょうか。