弁護士事務所のホームぺージに関する規制の内容は?広告規程を中心に解説

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弁護士ホームページ規制

弁護士事務所のホームページを制作するにあたっては、日弁連の広告規程に抵触しないよう気を付けなければなりません。

広告規程では、一般の企業が出している広告などに比べると、かなり詳細な広告に対する規制が定められているため、うっかりして見落としが生じないように注意が必要です。

この記事では、弁護士事務所のホームぺージに対して適用される、日弁連の広告規程の内容を中心に解説します。

弁護士と広告の歴史

広告規程の具体的な内容へと入る前に、まずは弁護士と広告の歴史について簡単に振り返ってみましょう。

日弁連発足当初は広告が全面禁止

日弁連(日本弁護士連合会)が発足したのは、1949年のことです。

それまで弁護士の広告については、特段の明示的なルールが定められていませんでした。
しかし、日弁連が発足した段階で、弁護士倫理の中で、弁護士による広告の全面禁止が定められました。

全面禁止の背景には、弁護士が広告を行うこと自体が、弁護士としての品位に欠ける行為であり、ふさわしくないという思想があったものと考えられます。

1987年の広告許容基準により弁護士広告が一部解禁

しかし、弁護士による広告の全面禁止は、弁護士に関する情報を得たいと考える市民の側にはたいへん不評でした。

そのため、1987年になってようやく、条件付きで弁護士による広告を認める「広告許容基準」が新設されました。

しかし、広告許容基準によると、広告に記載できる内容はごく基本的な情報に限られていました。
そのため、弁護士事務所ごとの特徴を広告内容から読み取ることはできず、依然として広告に関しては厳しい規制が行われている状況でした。

2000年に弁護士広告が原則自由化

広告許容基準の制定以後、弁護士のサービス業としての性質がさらに意識されるようになり、弁護士広告に関する規制緩和の議論が引き続き進められました。

そして2000年に、ついに弁護士広告が全面的に解禁され、弁護士は原則として自由に広告を行えるようになりました。

この際に新たなルールとして確立されたのが、「弁護士等の業務広告に関する規程」(広告規程)と、広告規程の条文解釈基準である「業務広告に関する指針」(広告指針)です。

(参考:「弁護士等の業務広告に関する規程」(日弁連HP))

(参考:「業務広告に関する指針」(日弁連HP))

広告規程と広告指針は、現在でも弁護士の広告に関するルールとして機能しています。

日弁連広告規程の主な内容を解説

弁護士事務所のホームページは、広告規程2条で定義される「広告」に該当します。
したがって、弁護士がホームぺージを制作する場合には、広告規程の内容に抵触しないように留意する必要があります。

広告規程に規定されている弁護士広告に関するルールのうち、主なものは以下のとおりです。

禁止される広告

広告規程3条では、以下に該当する広告が禁止されています。

①事実に合致していない広告

たとえば経歴詐称や、実在しない人物の推薦文を掲載する行為など、事実に合致しない事項が記載された広告は一切禁止されます。

②誤導または誤認のおそれのある広告

閲覧者をミスリードするような内容の広告は禁止されます。
広告指針を参考にすると、「誤導または誤認のおそれのある広告」の具体例としては、以下のようなパターンが考えられます。

  • 「損害賠償事件を過去に〇件取り扱った実績があります。航空機事故の損害賠償請求はお任せください。」
    →実際には交通事故の損害賠償請求が実績の大多数を占めており、航空機事故の損害賠償請求は全く取り扱ったことがない
  • 「交通事故事件で〇円の損害賠償を勝ち取りました。あなたもこのように高額な損害賠償を勝ち取ることが可能です。」
    →他の事件を例として挙げ、あたかも同じような結果が得られると思わせるような表現
  • 「割安(リーズナブル)な料金で受任いたします」
    →弁護士報酬についての曖昧・不正確な表現

③誇大または過度な期待を抱かせる広告

「どんな事件でも解決してみせます」「たちどころに解決します」など、実態以上に誇大・過度な期待を抱かせるような内容の広告は禁止されます。

④困惑させ、または過度な不安をあおる広告

必要以上に閲覧者の恐怖や不安をあおるような広告は禁止されます。

たとえば、以下のような内容の広告は、「困惑させ、または過度な不安をあおる広告」に該当するおそれがあります。

  • 「今すぐ請求しないと権利が失われる」ということを過度に強調する
  • 弁護士に依頼をしなかった場合の悲惨な状況についての体験記を掲載する

⑤特定の弁護士や弁護士事務所などと比較した広告

他の弁護士や弁護士事務所と比較して、自分や事務所のメリットを強調するような方法による広告は禁止されます。

⑥法令や弁護士会のルールに違反する広告

当然ながら、非弁行為や景品表示法違反、あるいは弁護士職務基本規程その他の日弁連・弁護士会のルールに違反する広告は認められません。

⑦弁護士の品位または信用を損なうおそれのある広告

広告の受け手である国民の視点から見て、弁護士の品位・信用を損なうおそれのある広告は禁止されます。

広告指針では、「弁護士の品位または信用を損なうおそれのある広告」の例として、以下のものが挙げられています。

  • 違法行為や脱法行為を助長し、またはもみ消しを示唆する広告
    (例)
    「法の抜け道、抜け穴教えます」
    「競売を止めてみせます」
  • 奇異、低俗または不快感を与える広告
    (例)
    「用心棒弁護士」
    ことさら残酷または悲惨な場面を利用した広告

表示できない広告事項

広告規程4条によると、次に掲げる事項については、弁護士が行う広告中に表示することができないとされています。

  • ①訴訟の勝訴率
  • ②顧問先や依頼者(本人の書面による同意がある場合を除く)・
  • ③受任中の事件(依頼者の書面による同意がある場合、および依頼者が特定されず、かつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合を除く)
  • ④過去に取り扱い、または関与した事件(依頼者の書面による同意がある場合、広く一般に知られている事件の場合、および依頼者が特定されず、かつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合を除く)

なお、上記は広告規程3条で禁止される典型的な広告事項を例示した者に過ぎないとされています。
したがって、上記以外の広告事項であっても、広告規程3条各号のいずれかに該当するものについては、広告中への記載が禁止されることに注意が必要です。

広告の方法についての各種規制

上記の広告内容面での規制に加えて、弁護士が以下の方法により広告を行うことは、原則として禁止されます。
ただし、公益上の必要があるとして所属弁護士会の承認を得た場合など、一部の例外が設けられています。

①面識のない人に対して訪問・電話・電子メール・郵便などで広告を行うこと(広告規程5条1項、2項、6条)
②広告の対象者に対して、社会的儀礼の範囲を超えた利益供与を行うこと(広告規程7条)

広告中に表示しなければならない事項

弁護士による広告の責任の所在を明らかにするため、および広告による被害の発生を未然に防止する手がかりとするため、弁護士や弁護士法人の広告には以下の事項を表示する必要があります。

<弁護士の場合>

  • ①氏名(または職務上の氏名)
  • ②所属弁護士会

<弁護士法人の場合>

  • ①名称
  • ②主たる法律事務所の名称または広告に係る従たる法律事務所の名称
  • ③所属弁護士会(複数の弁護士会に所属するときは、主たる法律事務所または広告に係る従たる法律事務所の所属弁護士会のいずれかを記載すれば足りる)

弁護士がホームぺージを制作する上での注意点

広告規程の中でもっとも中心的な規定は、禁止される広告について定めた3条です。

したがって、弁護士がホームぺージを制作する場合、特に広告規程3条で禁止される表現・内容が含まれないようにすることが大切です。

広告規程3条については、普段であれば何気なしに使用しているような表現であっても、厳密に考えればどれかの規定に抵触してしまうということが起こり得ます。

以下では、問題になりやすい表現の具体例を挙げますので、これらの表現は極力避けるようにしましょう。

<広告規程3条との関係で問題になりやすい表現例>

  • ①「専門分野」という表現
    →何を基準として専門分野と認めるのかの判定が困難であり、客観性が担保されず、誤導のおそれがあります。
    なお広告指針によれば、主観的評価を意味する「得意分野」という表現であれば、広告規程3条2号・3号に違反しないものとされています。
  • ②「最も」「一番」など、最大級を表現した用語
  • ③「完璧」「パーフェクト」など、完全を意味する用語
  • ④「信頼性抜群」「顧客満足度」など、実証不能な優位性を示す用語
  • ⑤「常勝」「不敗」など、結果を保証または確信させる用語
    →②~⑤は文脈によって、事実に合致しない広告・誤導または誤認のおそれのある広告・誇大または過度な期待を抱かせる広告などに該当する可能性があるので、使用の際には十分注意しなければならないとされています。

広告規程に違反した場合の制裁は?

弁護士が広告規程に違反した場合、法令または日弁連・弁護士会のルールなどに基づいて、以下の制裁を受ける可能性があります。

違反広告の中止命令・公表措置など

弁護士会は、所属弁護士が行っている広告について、記録の提出を求めるなどの調査を行う権限を与えられています(広告規程12条1項)。

調査の結果、広告規程への違反が認められた場合、弁護士会から弁護士に対して、違反広告の中止その他の必要な事項を命じます(同条5項)。

弁護士が弁護士会による中止命令等に従わない場合には、弁護士会により、中止命令等が行われた事実および理由の要旨が公表される場合があります(同条6項)。

弁護士会による懲戒処分の対象となる

弁護士による広告規程違反は、日弁連の会則違反として、弁護士の懲戒事由に該当する可能性があります(弁護士法56条1項)。

懲戒処分が行われる場合、広告規程違反の悪質性の程度などに応じて、以下の4つの処分のいずれかを受けることになります(同法57条1項)。

  • ①戒告
  • ②2年以内の業務停止
  • ③退会命令
  • ④除名

悪質なケースでは詐欺罪に問われる可能性がある

閲覧者を騙すような内容の広告を掲載し、それによって誤導された人からの依頼を受け、弁護士報酬を受け取ったようなケースでは、刑法上の詐欺罪(刑法246条1項)として、「10年以下の懲役」に処されてしまう可能性があります。

弁護士が広告規程違反により詐欺罪に問われるのは、きわめて例外的な場合に限られると考えられますが、念のため注意しておいた方が良いでしょう。

まとめ

弁護士事務所が公式ホームページを持つのが当たり前の時代となり、弁護士事務所間の競争も激化しています。
そんな中で、ホームぺージを少しでも潜在顧客に対して訴求できるような内容にしたいと考えるのは当然のことです。

しかし、広告規程に抵触する表現をホームぺージに用いてしまうと、第三者から違反を指摘されて懲戒処分を受ける、事務所の評判を落としてしまうなど、思わぬ形で営業に悪影響が生じてしまうおそれがあります。

特に日弁連の広告規程は、比較的よく用いられる表現・用語についても規制対象に含めている側面があるため、うっかり広告規程違反を犯してしまっているというケースも少なくありません。
弁護士の先生においては、広告規程の内容は十分把握されているものと思いますが、場合によっては第三者の視点からダブルチェックを受けることも、万全を期すための選択肢としては有効でしょう。

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