非弁行為とは?弁護士がWebマーケティング・集客を行う際の注意点

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この記事の監修者
鈴木潤 上級ウェブ解析士
【現職】 エファタ株式会社 Webディレクター
【専門】 士業向けデジタルマーケティング / 法務知見を活かしたWeb戦略 / 情報セキュリティ / ウェブ解析
【経歴】
・学術背景:早稲田大学 理工学部卒業/早稲田大学大学院 理工学研究科化学専攻修士課程修了
同大学院先進理工学研究科化学・生命化学専攻博士課程満期退学
・キャリア:SEOコンサルタントとして起業後、IT企業にてBCP・ポータルサイト運用を歴任
・現職: 士業特化のWeb制作・解析業務を統括
【保有資格】
・R6行政書士試験合格者(未登録)
・上級ウェブ解析士 / Google アナリティクス認定資格 / IMA検定
・情報セキュリティ管理士 上級
・デジタル推進委員(デジタル庁)
プロフィール

弁護士にとって、Webマーケティング・WEB集客の重要性は年々高まりを見せています。

Webマーケティングは、その効果にばかり目が行きがちですが、弁護士にとってきわめて重要な注意点として、非弁行為との関係があります。

Webマーケティング業者の中には、非弁行為を働く悪質な業者が存在することも事実です。

弁護士が非弁業者と関与してしまうと、刑事罰や弁護士会からの懲戒処分を受け、弁護士としての活動を続けていくことが不可能になってしまうおそれさえあります。
そのため、弁護士は非弁業者を慎重に避けたうえで、法的にクリア、違法行為にならぬようWebマーケティングを行っていくことが求められるのです。

この記事では、「非弁行為とは?弁護士がWebマーケティングを行う際の注意点」を解説します。

非弁行為とは何か

「非弁行為」とは、弁護士や弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことを指します(弁護士法72条)。

弁護士法が非弁行為を禁止している理由は、法律事務は専門的な知識・倫理が求められるため、無資格者が関与することで依頼者が不当な不利益を受けるおそれがあるからです。たとえば退職代行や債務整理といった事件であっても、弁護士資格のない者が報酬目的で処理すれば非弁行為に該当します。

Webマーケティングを外部業者に委託する場合、この非弁行為の問題が思わぬ形で生じることがあるため、注意が必要です。

弁護士にすり寄る非弁提携Webマーケティング業者の手口とは?

Webマーケティング業者の中には、開業したばかりであるなど、これから仕事を増やしていこうとする弁護士にすり寄って、非弁提携の話を持ち掛けてくる悪徳業者も存在します。

その中でも特に悪質なのが、Webマーケティング業者が非弁行為を働くために、弁護士に名義貸しを依頼するなどして、実質的に法律事務所を乗っ取ってしまうケースです。
このような悪質な業者に加担しないように、非弁Webマーケティング業者の手口を理解しておきましょう。

弁護士に名義貸しを依頼する

弁護士法上、法律事件を取り扱うことができるのは、原則として弁護士のみであるということになっています。

そのため、法律事件に悩んでいる人から搾取して利益を得たいと考えているWebマーケティング業者は、表向きには弁護士が対応しているという体裁を取り、弁護士法に従ったビジネスをしているように見せかけようと考えます。
そこで、仕事を増やすためにWebマーケティングに力を入れようと考えている弁護士にアプローチをかけて、名義貸しを依頼するのです。

弁護士の側が、弁護士倫理を意識することなく「お金になるならいいか」と応じてしまうと、名義貸しを禁ずる弁護士法27条に違反し、刑事罰や懲戒処分の対象になります。

事務員を法律事務所へ派遣して、無資格で法律事件を取り扱う

弁護士から名義貸しの承諾を得たWebマーケティング業者は、法律事務所に対して、事件を取り扱うための事務員を派遣します。

対象となる法律事件は、過払い金請求などのマニュアル的な処理が可能なものが中心となります。
非弁Webマーケティング業者は、それほど高度な専門的知識を必要としない法律事件を大量に受注し、マンパワーを活用してマニュアル的に処理することによって、弁護士の力を借りずに多額の利益を得ようと画策していることが多いからです。

取り扱っている事件の内容が定型的だとしても、れっきとした「法律事件」であることに変わりはありません。
したがって、Webマーケティング業者の行為は、弁護士法72条が禁ずる非弁行為に該当します。

弁護士と非弁業者の間で報酬を分配する

非弁Webマーケティング業者は、処理した法律事件で得た報酬の一部を、名義貸しの対価として弁護士に分配します。

弁護士は労せずして報酬を得られる結果となりますが、これは非弁業者との報酬分配を禁ずる弁護士職務基本規程12条に違反します。

報酬額も、所詮は名義貸しの対価に過ぎないので、実際に非弁Webマーケティング業者が得た利益のうち、ごくわずかなものにとどまるケースが多いようです。
よって、弁護士が背負うことになる刑事罰や懲戒処分などのリスクと天秤にかければ、到底割に合わないものであると認識しておくべきでしょう。

法律事務所が乗っ取られてしまう

事態が進むと、法律事務所の売り上げの大部分を非弁提携案件が占めるようになり、経営の実権を業者に握られてしまいます。

顧客とのトラブルが多発したり、多額の債務を負って破産に追い込まれたりするケースもあります。

実例:弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所の破綻

2020年、負債総額約51億円を抱えた弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所が破産しました。過払い金請求を中心とした事件を大量受任していた同事務所は、外部のマーケティング業者との提携関係が問題視されており、業者依存の経営モデルが破綻に直結したとみられています。

依頼者への返金が滞り、多くの被害者を生んだこの事例は、非弁提携の深刻なリスクを示す典型例として業界に衝撃を与えました。

参考記事:「弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所の破産でお困りの依頼者様へ(債務整理カフェ)」

Webマーケティングは非弁の問題を生じ得る|非弁規制の内容について

弁護士事務所が、Webマーケティングを外部業者に依頼して行う場合、弁護士法や弁護士職務基本規程における「非弁行為の禁止」に抵触しないよう注意しなければなりません。

まずは、弁護士法と弁護士職務基本規程における、非弁行為に関する規制条文の中で、Webマーケティングに関連するものをおさらいしておきましょう。

弁護士法

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

(非弁護士との提携の禁止)
第二十七条 弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
(弁護士法72条、27条)

弁護士職務基本規程

(非弁護士との提携)
第十一条 弁護士は、弁護士法第七十二条から第七十四条までの規定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる 相当な理由のある者から依頼者の紹介を受け、これらの者を利用し、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
(報酬分配の制限)
第十二条 弁護士は、その職務に関する報酬を弁護士又は弁護士法人でない者との間で分配してはならない。ただし、 法令又は本会若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。
(依頼者紹介の対価)
第十三条 弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならない。
2 弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはならない。
(弁護士職務基本規程11条~13条)

日弁連「弁護士の業務広告に関する規程」

非弁規制とあわせて理解しておきたいのが、日弁連が定める広告規程です。弁護士のWebマーケティングは「業務広告」にあたるため、この規程の範囲内で行う必要があります。

Webマーケティングに関連する主な禁止事項は以下のとおりです(同規程4条)。

事実に合わない広告の禁止 実際の取扱い実績・専門性・費用などについて、事実と異なる内容を掲載することは禁止されています。「解決実績No.1」「必ず勝訴」「着手金0円」といった表現は、根拠や条件の明示なしに使用すると問題になりえます。

誤導・誤認を招く広告の禁止 内容が事実であっても、表現の仕方によって依頼者に誤った認識を与えるような広告は禁止されています。たとえば、一部の条件下でのみ適用される費用体系を「費用一切不要」と表現するケースなどが該当します。

誇大・過度な期待を抱かせる広告の禁止 「絶対に解決できます」「どんな案件でも対応可能」といった、過度な期待を抱かせる表現は禁止されています。

比較広告・品位を損なう広告の禁止 他の弁護士や法律事務所と比較して優位性を強調する広告、または弁護士の品位を損なうような表現も禁じられています。

弁護士または弁護士法人でないWebマーケティング業者は、報酬を受ける目的で、法律事件の周旋を行うことが禁じられています。

また弁護士の側も、こうした非弁Webマーケティング業者から法律事件の周旋を受けることが禁じられているのです。

さらに、非弁行為を助長することに繋がる行為として、弁護士が非弁Webマーケティング業者に対して報酬を分配したり、依頼者紹介の対価を支払ったりすることも禁止となっています。

弁護士が非弁行為に加担した場合に科される罰則・制裁

弁護士がWebマーケティング業者による非弁行為に加担した場合、弁護士法に基づく刑事罰や、弁護士会からの懲戒処分を受ける可能性があります。

弁護士法違反(刑事罰)

弁護士は、非弁業者から事件の周旋を受けた場合、弁護士法27条に定められる「非弁護士との提携の禁止」に違反します。

この場合、「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処される可能性があります(弁護士法77条1号)。

弁護士会による懲戒処分

弁護士が「非弁護士との提携の禁止」に違反した場合、弁護士法上の懲戒事由に該当します(弁護士法56条1項)。

この場合、違反の悪質性などが勘案され、①戒告、②2年以内の業務停止、③退会命令、④除名のいずれかの処分を受ける可能性があります。

弁護士が懲戒処分を受けてしまうと、弁護士としての評判が大きく下がってしまいます。
また、業務停止以上の処分を受けた場合は、顧客を失ってしまうことになるのでより深刻です。

くれぐれもWebマーケティングを行う際は、非弁業者に加担することにならないよう、十分に注意してください。

弁護士が適法に行えるWebマーケティング手法

非弁行為に当たらない適法なWebマーケティングの手法は多数あります。以下を参考に、正しい方法でWeb集客に取り組みましょう。

SEO(検索エンジン最適化)/AIO(AI検索最適化)

自事務所のWebサイトを検索結果の上位に表示させるための施策です。

「○○市 離婚 弁護士」「交通事故 示談 弁護士」などのキーワードで上位表示されることで、見込み依頼者にアプローチできます。
あるいは、最近では、AIによる概要欄(AI Overviews)に表示されることが重要になってきています。

コンテンツの作成・改善は弁護士自身または信頼できる制作会社に依頼しましょう。

MEO(Googleマップ対策)

Googleマップ上での事務所情報を最適化し、地域検索での露出を高める施策です。特に地域密着型の事務所にとって効果的です。

リスティング広告(Google広告など)

特定のキーワードで検索したユーザーに広告を表示する手法です。即効性がある反面、費用がかかります。広告の管理は自事務所または広告代理店に依頼しますが、代理店が法律事件の内容に介入したり、依頼者の個人情報を取り扱ったりすることがないよう、契約内容を明確にしておくことが重要です。

SNS運用・ブログ発信

Twitter(X)、YouTube、Instagramなどで法律情報を発信することで、潜在的な依頼者との接点を増やす方法です。弁護士自身が発信者となることで、信頼性の高いブランディングにもなります。

弁護士ポータルサイトへの掲載

弁護士検索サイト・相談サイトへの掲載も有効な手法です。ただし、ポータルサイト経由で「依頼者の紹介を受けることへの対価」が発生する構造になっていないか、弁護士職務基本規程13条に照らして確認が必要です。

悪質業者を見分けるためのチェックリスト

Webマーケティング業者と契約する前に、以下の点を確認しましょう。

  • 業者が法律事件の内容に関与・アドバイスしようとしていないか
  • 依頼者の個人情報に業者がアクセスできる仕組みになっていないか
  • 成果報酬型の契約で、受任件数や報酬額に応じた支払いを求めていないか
  • 業者が事務員を事務所に派遣しようとしていないか
  • 業者が事務所の名義や弁護士の名前を独自に使用できる契約になっていないか
  • 日弁連や所属弁護士会の広告規程に照らして問題のある広告表現が含まれていないか

一つでも該当する項目があれば、契約を見直すことを強くお勧めします。

非弁提携業者に関するよくある質問

弁護士にすり寄る非弁提携業者の手口とは?

  • 弁護士に名義貸しを依頼する
  • 事務員を法律事務所へ派遣して、無資格で法律事件を取り扱う
  • 弁護士と非弁業者の間で報酬を分配する
  • 法律事務所が乗っ取られてしまう

等の手口があります。非弁業者には気を付ける必要があります。

 

弁護士が非弁行為に加担した場合に科される罰則・制裁は?

2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処される可能性があります(弁護士法77条1号)。

弁護士が「非弁護士との提携の禁止」に違反した場合、弁護士法上の懲戒事由に該当します(弁護士法56条1項)。

この場合、違反の悪質性などが勘案され、①戒告、②2年以内の業務停止、③退会命令、④除名のいずれかの処分を受ける可能性があります。

ポータルサイトへの掲載は問題ないか

弁護士ドットコムをはじめ、依頼者紹介に対する対価の支払いにあたらない仕組みであれば、一般的には問題ありません。ただし、サイトの運営形態や契約内容によって判断が異なる場合があるため、掲載前に弁護士会に相談することをお勧めします。

まとめ

弁護士がWebマーケティングを行う際には、日弁連が定める指針の内容を踏まえて、非弁業者との提携を厳密に避ける必要があります。

Webマーケティングの手法はさまざまですので、不慣れな弁護士の先生は、士業のWebマーケティングに特化した業者に相談することも有効でしょう。

当社では、本文中でも紹介した「弁護士相談Cafe」のサイトなど、数多くの弁護士ポータルサイトを運営しています。

この記事で解説した非弁に関する規制についても、十分に踏まえたうえで運営しておりますので、Webマーケティングにご関心をお持ちの弁護士の先生は、ぜひ当社宛にご連絡ください。